はなのかんばせ

だいがくいんせいのらくがきのーと

小説

愛について語ること

「愛って何だと思う?」 と夕暮れの公園でブランコに揺れながら彼女は言った。 僕は彼女の求めている答えがさっぱりわからない。愛、そんなもの、まだ考えたことがなかった。 「なんなんだろうね。気にはなるね」 「困ったら質問で返さないの」 彼女は暮れゆ…

さまよえる人

明かりの少なくなった街を俊介は歩いていた。人影はほとんどなく、見かけるとすれば、野良猫くらいのものである。車の通りも疎らで、俊介は車の多い方へ行こうと、住宅街を抜けて大通りへ出ることにした。 電灯と民家から漏れるわずかばかりの明かりを頼りに…

「雨」「換気扇」「ニュース」

記録的な大雨が降り続いているというニュースを見たのは、雨が降り始めた随分後だった。ニュースは雨が降り始めたころからずっとやっていたのかもしれない。俺がニュースを見たのはついさっきだったというだけで。 「○○地域では土砂崩れの恐れがあり、避難勧…