これを読んだ。「abさんご」の方の感想はまた気が向いたら書く。たぶん書かないだろうけれど。
本作は2013年に75歳で芥川賞を受賞した黒田夏子さんが書いた作品です。受賞したのは「abさんご」の方です。受賞したのはこの年ですけれど、あとがきを見るに二つの作品とも20年程度前に書かれていたもののようです。
「感受体のおどり」が書かれたのは1984年らしい。単純計算で、40代半ばで黒田さんはこの作品を書いたことになる。正直言って、信じられない。
作品に散りばめられた彼女の感性は若々しさに満ちていて、それは10代のようでもあり、20代のようでもあり、またそれ以上でもある。そのどれもが、虚構性というよりはある種の真実性を持って読者に迫ってきた。
350の篇のどれも完成度が高く、読み終わったらまた適当に本を開いて読み返したくなってしまうほどで。走井が好きだった。あと、日本語がとても美しいのも魅力的です。「文化の匂いのする人」「敵」とかのくだりがすごい好き。
様々な人と私の話が展開されていくなかで、やっぱり私は他者に悩む。他者、私ではない誰か、結局わたしにとっての世間なんてわたし以外の何でもないのに、と太宰的なあれやこれやを考えながら読んだ。
いっぱい書きたいことがあるけれど、要領よく書けないので辛い。とりあえず、とても良いものを読めた。
もう私がやめようとしている教員という役割からはそうつきはなすことにいくらかのうしろめたさがあるとしても,印板があくまでも安穏な循環の中に受けいれられたいとねがうならば,すでに私たちは敵なのではなかったか.