はなのかんばせ

だいがくいんせいのらくがきのーと

眠れぬ夜のために

 小説ばかりを読んでいるとバカになるというのは、私の周りでは大変よく聞く話であり、私自身もそのように感じることが多くなってきた今日この頃であります。正しくは小説よりも物語といった方がいいのかもしれません。物語は何も考えなくとも読めてしまうからです。

 読むということには、一定の知識とテクニックと経験と、少しばかりのお砂糖が必要です。自分の今読んでいるものがどのような時代背景で書かれたものなのか、また技術的にはどのような段階の作品なのかといったことがまず理解できていなければなりません。さらに、当たり前ですが簡単なナラトロジーの知識も必要になります。小説とは、決して自由なものではなく、複雑な制度によって制限された芸術(小説はいつから芸術になり、またいつから芸術ではなくなったのか)です。制度を理解した上で読むこと、それが前提になっていなければなりません。

 かといって、小説を読むことに頭を使うのかというとそうではないように思います。哲学とか思想とかについて書かれた本を読む方がよっぽど、頭を使います。それもどうなんだとは思いますが。知的に誠実であること、小説についてそんな態度をとり続けることはとても難しいです。近頃の小説はそもそも知的な人が書いているわけではありませんので、土台無理な話なのだと思ったりもします。

 何が言いたいかというと、小説を読むのには体力がいるということです。決して眠れぬ夜の働かない頭で読むべきではないのです。まずは筋トレを3ヶ月続けて基礎体力をつけてからでないと小説は読めません。しっかりと日々の運動を忘れずに。煙草とコーヒーでページをめくりましょう。